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海水パールと淡水パールの価値が違うのはどうしてなのか

海水パールと淡水パールの価値が違うのはどうしてなのか

その理由を出来るだけ分かり易く記載いたします。

まず大きく「生産量による希少性」と「パールの容姿の違い」が価値を分ける要因としてあげられます。


「生産量による希少性」とは

生産量による希少性の違いを生み出すのは以下の3つのポイントが関わってまいります。


➀ 母貝のサイズの違い

- 海水パール -
アコヤ貝、白蝶貝、黒蝶貝などの海水で生産されるパールの母貝はサイズが小さいため、1つの貝で作られるパールの量が基本的には1個、小さなサイズのパールを作る場合でも数個程度と限られている。

- 淡水パール -
湖などの淡水で養殖されるイケチョウ貝(日本の固有種、現在はヒレイケチョウ貝との交雑種が日本で養殖)、ヒレイケチョウ貝(中国の固有種)はサイズが大きく、1つの貝でイケチョウ貝で~10個程度、ヒレイケチョウ貝で~数十個程度のパールを養殖することが可能。

※大まかな貝のサイズ比較は見出し画像参照


➁ 母貝に施す作業の違い

- 海水パール -
「核」と呼ばれる貝殻でできた養殖パールのベースとなる球体と、「ピース」と呼ばれる外套膜の切片を母貝の身の中に挿入し、その周りに真珠層が巻き付く事でパールが生成されていく。
2つを適切な場所に挿入する技術は非常に難しく、職人の技量により出来が大きく左右され、また、ひとつの貝に対して1つずつ挿入していくので時間がかかる
核を基に、いかにして丸くて層がしっかりと巻いた綺麗なパールが作れるかがファーマーの腕の見せ所となる。

- 淡水パール -
「無核」の生産が大半で、「ピースのみ」を母貝に挿入する。
母貝が大きい為1つの貝にたくさんのピースを一気に入れる事が可能なので、海水パールに比べると早い時間で作業が出来る
核が無い上に層が形成されていくので、様々な形のパールが産出される。
「有核」の淡水パールも養殖技術の向上などにより良いものが作られてきており、全体的な生産量の比率としても年々多くなってきているが、生産量全体としては無核の淡水パールが大半。


➂ 飼育環境の違い

- 海水パール -
波があり安定しない海の中で育てられるため、季節や海の状況に合わせて養殖中の貝を移動させたり、貝についたフジツボや海草などを除去・掃除する作業など多くの手間とコスト(人件費などの運営費など)が掛かる

- 淡水パール -
波が無く比較的緩やかな環境が見込める湖で作られ、基本的には貝を湖に入れたままで、定期的に貝の状態を見ながら養殖する。
海よりも比較的手間を掛けず効率よく生産することが可能で、運営のコストも海水での養殖に比べると安くなる。(人件費においても、淡水パール全体の99%の生産量を担っている中国での人件費も現在のところは、日本やタヒチなどの海水パールの従業者に比べると安いことも一因。)


上記の通り、海水パールと淡水パールの価値の違いを生み出す大きな要因はこれら3項目による生産性の差で、年間生産量にすると淡水パールを100とすると海水パールは5%以下となるので、希少性の面で異なってきます。

アコヤパール 黒蝶パール 白蝶パール 淡水パール
水域
年間生産量(kg) 約22,000 約13,000 約12,000 約1,550,000
産地 約90%日本、10%ベトナム、中国 約99%タヒチ、1%未満フィジーなど 約45%インドネシア、20%フィリピン、20%オーストラリア、15%ミャンマーなど 約99%中国、1%未満アメリカ、日本など

※矢野経済研究所2015年データベース参照

 

「パールの容姿の違い」とは

「生産量による希少性の違い」以外にも、「パールの容姿の違い」も価値を分ける大きな要因となります。
これは母貝となる貝が分泌して出来る真珠形成層の質の違い(貝殻の内側にキラキラした面と同じ成分)によるもので、出来上がったパールの光沢や色合いなどが海水パールと淡水パールでは違うからです。


パールの容姿の違い

- 海水パール -
光沢が強いものが多く、干渉色が綺麗に反映された色味を持つものが多い。
光沢は積み重なる結晶の薄さが特に関係*¹しており、海水パールは淡水パールに比べると真珠層を形成する結晶が薄く、そのため光沢が強く、干渉色も色鮮やかに見えるものが多い。
色は母貝の種類で異なり、アコヤパールや白蝶パールはホワイト、イエロー、ゴールド、グレーなど。黒蝶パールはグリーン、ブルー、グレーなどの黒っぽい色合い。
核をベースにその上から真珠層が重なっているので、核の入っていない淡水パールと比べると、真珠形成層の厚さ(巻き)は薄くなる。この巻きは真珠の強度にも関りがあり、淡水パールに比べると強度・耐久性は弱くなる

- 淡水パール -
海水パールに比べ、光沢がまろやかに見える物が多く、干渉色が鮮やかに現れるものが少ない
色のバリエーションとしてはオレンジやピンク、パープルなどの海水パールとはまた異なった色が多く出来る。
無核の淡水パールは真珠層のみでパールが形成されているので、当然真珠形成層(巻き)が厚く、強度・耐久性が高く丈夫である。
母貝が大きな淡水貝では様々な形のパールが生産されており、有核の淡水パールにおいては、コイン型や星型、ハート型などの海水パールでは作られていない、様々な形のパールが養殖されている。

※1.
真珠層は薄板状のアラゴナイト結晶とタンパク質のシートが交互に積み重なって形成されており、パールにおける光沢は、薄い結晶がたくさん緻密に綺麗に積み重なった物であればあるほど、たくさんの反射光を生み出し、目に映る輝きが強くなります。
結晶1枚1枚が厚いと、必然的に外部からの光を受ける結晶数が少なくなるため、反射光が少なくなり、目に映る輝きが弱くなります。
1枚の結晶が海水パールに比べて厚い傾向にある淡水パールは光沢が出にくく、海水パールにおいても結晶の積み重ねが少ない物(巻きが薄い)は反射が少なく、あまり美しくない光沢となります。(真珠層が薄いパールの中にも、その薄い層を形成する結晶が緻密に綺麗に並んだものなどは、真珠層が薄くても光沢が出る場合があるので、一概には言えません。ただし、真珠層が薄いと中の白い核が透過して見えてくるので、真珠層の厚いパールとは見た目の綺麗さが違ってきます。)

 

上記の通り、基本的には海水パールの方が光沢が良いものが多いですが、すべての海水パールが淡水パールより光沢などが良いわけではなく、あくまでも生産数での比率などから全体を通して見た際の比較です。
例えばアコヤパール(海水)で3万円程度の真珠層の薄いネックレスと、淡水パールで3万円程度のネックレスだと、淡水パールの方が見た目の印象が良いかもしれません。この場合は強度・耐久性の部分でも淡水が大きく勝ります。

また、淡水パールが生産量が多いから、すべて価値が低いと言うわけではなく、例えば日本でわずかに作られている、霞ケ浦や琵琶湖の淡水パールなどは生産量やコストの面から中国産のものよりも市場価格は高く、中国産の淡水パールの中でもわずかしか採れない、アコヤパールのように白く丸いうえに干渉色の綺麗に出た物や、淡水にしか出せないメタリックなカラーのパールなど、そういいった物は価値が高いと言えます。

以上がざっくりとした海水パールと淡水パールの違いで、これらにより価値が異なってきます。

しかし、残念ながら産地や生産量などに触れず、あたかも希少性の高い物のように謡われて淡水パール(淡水パールに限った話ではないないのですが…)を販売されている場合があるのも事実です。
例えば、淡水のバロックパールで、"SSクラス・超希少"などと言った評価を記載されていた物が、完売後に何度も入荷しているのを見て、プロとして正しいグレーディング、価値のつけ方がなされているのか、疑問に思った事もあります。
もちろん、淡水パールならではの個性で、希少価値の高いものもありますが、本当に希少な物であれば生産量の多い淡水パールであっても年に何度も入荷する事は無いと思います。

何を良しとして、どういった品質の物を購入するかは、買い手の価値観次第ですが、もし「ジュエリー」としてのパールを購入するのであれば、その物の価値や素材の情報をある程度理解したうえで購入して頂きたいなと思いますし、私たち売り手も正しい情報を出来る限りしっかりとお伝えさせて頂いた上で販売するべきだと思います。

sCenesで扱うのは

sCenesでは現在、養殖パールの原点である日本産のアコヤパールをはじめとした海水パールの、光沢が良く、巻きがしっかりとした上質なモノを使い、ジュエリーに仕立てています。(淡水パールにしか出せない色や形などもあるので、淡水パールの良さを活かしたいジュエリーが出来た際は、またご紹介させて頂きたいと思います。)

sCenesのジュエリーは他では見た事の無い圧倒的なデザイン性や、製作者である私たちにすごい経歴があるわけではありませんが、パールの品質やグレーディング、専門メーカーにしか出来ないプライシングには、パールに長年携わることで得た経験による自信があります。
もしパールの事や、商品に関してして疑問や質問などがありましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

身に着けたひとの日常の様々なシーンを彩るジュエリーを、私たちならではのカタチで提案していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。