サイズでわかる
パールの付加価値
「13mmのアコヤパールありますか?」
お客様からこんな質問をされたとしても、私たちの返事はひとつです。
「残念ながらございません。」
厳密に言うと「そのサイズのアコヤパールがある可能性は0ではありませんが、まず手に入れることは相当難しく、長くパールに携わっている私たちでも、一度も見たことが無いサイズだから、こう言うしかない。」ということなのです。
では、どのようなサイズなら手に入れられるのか、養殖パールの母貝のことや、生産について触れながら、パールのサイズのお話をさせていただきたいと思います。
母貝の大きさ
パールのサイズは、パールをつくり出す母貝の大きさに比例しています。
パールを養殖する際に、貝の体内に核と呼ばれる貝殻で出来た球体と、ピースと呼ばれる貝の外套膜の切片を入れることで、核の周りに真珠層が形成されパールが出来上がります。
つまり、体の大きな貝になるほどサイズの大きな核を入れることが出来るため、大きなパールを産出できるようになり、母貝が小さな種類は必然的に生産できるパールのサイズが小さくなります。
左からアコヤ貝、黒蝶貝、白蝶貝(ゴールドリップ)、白蝶貝(シルバーリップ)※アコヤ貝以外は整形カットされています。
養殖パールのベースとなる淡水貝を丸く削って作られた「核」。作りたいサイズに合わせて貝に挿入する。
生産されているサイズ
以下の画像をご覧ください。
この画像内に掲載しているサイズ表は、マーケットに出回っていて私たちが普段扱うことのできる主なパールのサイズを示しています。
画像に載っていないサイズもありますが、生産量は非常に少ないため、ここでは省いています。
■アコヤパール
貝の大きさの比較画像からも分かるように、養殖されている海水パールにおいて一番小さいのはアコヤ貝(学名:Pinctada Fucata Martensii)から採れる「アコヤパール」です。
3~10mmほどまでが養殖されており、全体の生産量のうちの多くは7~8mmの大きさが作られています。
6mm以下の小さなサイズは全体の20%にも満たない数しか作られておらず、特に厘珠と呼ばれる3~4mmのサイズはわずか1%以下の生産にとどまります。
10mmアップの大きなサイズも生産量としては少なく、11mmよりも大きなサイズは、小さなあこや貝には大きな負荷がかかるため、ほとんど作られることはありません。
はじめに例えで出てきた13mmと言うサイズは、アコヤパールでは基本的に養殖不可能なサイズであると言えるのです。
■黒蝶パール
次に大きなサイズを作るのが黒蝶貝(学名:Pinctada Margaritifera)から採れる「黒蝶パール」。
貝の大きさとしてはあこや貝と白蝶貝の間くらいのサイズで、養殖されているのは8~14mmほどになります。
主に生産されているのは9~10mmで、12mmよりも大きなサイズになると黒蝶パール特有の濃い色味をまとうパールの産出量が少なくなり、淡い色のものの割合が多くなります。
そのため大きなサイズで色の濃いものは市場価値が高くなります。
また現在のところ黒蝶貝で小さなサイズの養殖は行われておりません。
■白蝶パール(ゴールデンパールを含む)
最も大きなサイズを作るのが、白蝶貝(学名:Pinctada Maxima Jameson)から採れる「白蝶パール」です。
貝の大きさは直径20cm以上と大きく、真珠層の周縁部の色が異なる「シルバーリップ」と「ゴールドリップ」との2種類に分かれます。
シルバーリップからはホワイト、シルバー、クリーム系が、ゴールドリップからは、ゴールド、イエロー、クリーム系の色味が産出され、それぞれ異なるエリアで生産されるため、パールの種類として分けられています。
ともに主に生産されているのは10~11mmで、アコヤパールでは最大級のサイズが平均的なサイズとなります。
貝のサイズも大きい事から、養殖可能なサイズの幅は広く、アコヤや黒蝶ではまず見る事の出来ない、15mm以上の大きなサイズのパールを見ることが出来ます。
サイズの分け方
私たちがパールのサイズの分別する際は、パール屋さんでしか使っていない特殊な道具を使用します。
ひとつは「篩 - ふるい -」と呼ばれる、サイズ毎に穴があいたプレートを入れ替えて使用する道具で、このプレートは1mmの中で0.25mm刻みで4サイズあり、例えば9mmだと「9」「9¼」「9½」「9¾」と存在します。
特にアコヤパールのサイズをふるい分ける場合は、この0.25mm刻みがとても重要で、ピアスやイヤリング用のペアを組む場合は、必ず1/4のプレートを使います。
例えば8 - 8.5mmの同じサイズとされているロットの中でも、8mmと8.49mmでペアを組んでしまうと随分見た目の大きさに違いが出るため、8-8.25mmと8.25-8.5mmに「8¼」のプレートを使って0.25mmで分けて、出来るだけ左右でサイズの誤差の無いペアを作ります。
また、アコヤパールの市場取引は黒蝶や白蝶パールとは違い、0.5mm単位で売買が行われるため、生産者であるファーマーも「篩 - ふるい -」を使ってパールをサイズ分けして出品します。
この「篩 - ふるい -」と呼ばれる道具は、パールのビジネスにおいて最も欠かせない道具のひとつと言えるのです。
もうひとつは「ゲージ(サイズ測り)」と呼ばれるサイズの測定に用いる道具で、0.01mm単位で測ることの出来るため、とても重要な道具のひとつです。
「篩 - ふるい -」で0.25mmきざみで分けた後は、この「ゲージ」を使って更に細かいサイズを測っていきます。
例えばアコヤパールネックレスなどを組む場合、センター珠と呼ばれる真ん中にくるパールは最も大きい物を使うことが望ましい為、「ゲージ」で計測することが必要になります。また、リングに接着できるパールのサイズなど、具体的な数値を確認する必要のあるデザインのジュエリーを作る場合にも必要不可欠な道具です。
サイズでパールを選ぶ
パールの価値を決めるうえで、「サイズ」というのは大きな要素のひとつです。
やはりサイズは大きくなればなるほどに市場価格が高くなり、さらにパールの形や光沢、キズの程度、色味などの他の要素のグレードも上がると、値段もそれ相応に高くなってきます。
ただ、それぞれのパールの生産されているサイズを知ることで、上手にパールを選ぶことが出来ます。
例えば、
「白くて大きな綺麗なパールが欲しい」という場合では、アコヤパールでは最大級とされる10mmや11mmは希少性が高いために値が張りますが、白蝶パールでは10mmや11mmは平均的なサイズであるため、アコヤパールの同サイズの物よりもお求めやすい価格で手に入れる事が出来ます。(比較するグレードや、検討する時期の相場によるが。)
他にも、
「黒蝶パールで濃い色の大きいものが欲しい」といった場合は、12mmUPで色の濃いものになると数が少なくなり、値段がグンと高くなるため、お求めやすいパールで良い品質であることを重視するなら、10mmや11mmで濃い色をしたパールを選ぶ。
などといった、選択肢を持ってパールを選ぶことが出来るようになります。
理想とするパールがある場合は、是非今回のはなしを参考にしていただきたいと思います。
sCenesでは、パールを専門にしているブランドとして、パールに関する豊富な知識や情報を提供させていただきます。
「こんなパールが欲しい」などのご希望があれば、いつでもお気軽にお問合せくださいね。
「パールをふるいにかける」作業風景を撮影してみました。
短い動画ですのでお時間あればぜひご覧になってください。
※Youtubeの再生設定画面より、画質を1080pにしてご覧ください。